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7

「ミリア、ミリアっ、しっかりなさい!」

 国から出た、勇者死亡のお触れ。
 闇を封じることはできたが、同時に勇者が犠牲になったと、彼と共に旅をしていた仲間たちが涙ながらに語ったそうだ。

 国は命を犠牲にして人々を守った英雄として、『さようなら愛しの勇者様追悼会』が開かれているそうな。

「ミリア! ああ、目が死んでますね。しっかりなさい!」

 往復ビンタが私を襲う。

 痛い。

 痛い、けど。

 痛いのか、よく分からない。

「ミリア、いいですか? 死者は生き返りません。それはこの世の運命さだめなのです」
「……どう、して……」

 平々凡々な村人だったはずだ。
 それが勝手に勇者なんて担ぎあげられて。同い年だったのに。死んだって。人のために?

「もぅ、ほんと、バカで困っちゃいますね……いつもやる気なんてないくせに、こんなときばっかり格好つけて……勇者なんて、辞めちゃえばよかったのに……」
「ミリア……」

 乾いた笑いと、冷たい涙が溢れた。
 神官様がやるせなさそうに顔を歪めて、幼子をあやすように私を抱きしめる。

「すみません、ミリア。私が、迎えに行ったから……」
「違い、ます。元はと言えば、あの変な剣が……」

 たった一本の剣が、運命を狂わせたんだ。
 もしも見つけたら、粉々に砕いてやる。

「どうします? 家に帰りますか?」

 神官様の声に、首を振った。

「帰り、ません。あそこは、思い出が多すぎるから……」
「……そうでしたね。すみません、無責任な発言でした。しばらく休暇を与えましょう。落ち着いたら、また手伝ってくださいますか?」

 小さく首を縦に振る。神官様は、ポンポンと私の頭を撫でると、そっと、部屋を出ていった。

 布団の中に潜り込んで、ボロボロと泣いた。

 まさか、死んでしまうなんて思わなかった。
 そうだと分かっていたなら、もっと、たくさんのことを伝えたのに。

 ──『それだけか?』

 そう言った、アルジールの言葉が蘇る。

 本当は違う。
 帰って来てと言いたかった。私のところに、帰って来て、と。

 言えなかった想いが喉までせり上がって、涙となって溢れ落ちる。
 伝えないことを選ぶのと、伝える人がもういないのとでは、全然違う。

 言っていたら、驚いたのかなとか。困ったかなとか。迷惑そうにしたかなとか。

 たくさんたくさん考えても、それはもう幻想でしかない。

「……ばか」

 小さく呟いた声は、もう届かない。

 五日ほど寝込んだ日のことだった。もう生きていくのも嫌だなぁと思っていたとき、コンコン、と窓がノックされた。

 うるさいなぁと思って無視を続けるけれど、ノックは止まらない。なんなら、どんどん激しくなっている。ガンガンと打ち付けられていて、窓が割られそうだ。

 仕方なく飛び起きて、窓に向かった。

 そして、息を飲む。

「……ジル?」


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