6/3 中編新作公開しました

07 怪しい美男子に会いました

『お嬢ちゃん、あんた、スキル使いだろう?』

 な、なに、このごっっついおっさ……いや、おじさん!

 どうしてスキルのことを!? このひとも転生者?
 それとも、やっぱり知っている人はスキルのことを知っているの?
 もしもそうなら、情報が欲しい。だって、スキルの使い方わからないんだもの。

 いや、でも待って。

 どう見てもこの人、悪役……!!

 
「なんのことでしょう?」
 

 すぐに外行きの仮面を被って微笑む。
 むやみやたらにスキルのことが知られたら、大問題になる可能性がある。
 まずは相手の出方をうかがってからでないと……!

 ここは知らぬ存ぜぬを貫き通す!

 
「んんっ、俺の勘違い、か? スキル使いじゃ、ない? いや、でも今確かにイリュージョン……」
 

 なっ、この人、イリュージョンを知ってる?!
 まさか、やっぱり私と同じ転生者!?
 

「人違いならすまんかった、俺の勘違いらしい。じゃあな、嬢ちゃん。気ぃつけて帰りな!」

「あ、待っ……」

「マルク、何をしているんだ」
 

 建物の影から、フードを目深に被った怪しげな人が現れた。

 げげ、やっぱり不審者? 悪役!?

 呼び止めようと伸ばしかけた手を、そっとおろす。

 
「エルク様! もう、待っててくださいとあれだけ言ったでしょう」

「おまえが遅いのが悪い」

「寂しかったんですか?」

「そうだ」

「……エルク様っ!」
 

 え、何この茶番。
 フードの人、スラッとしてるけれど背も高いし、声は低めだし、男の人、よね?

 …………だめよ、私は何も見てないわ。
 何も見ていない……っ!

 そっと忍び足でこの場を去ろうとして、フードの男に気づかれた。

 
「なんだ、そこの女」
 

 レディーに向かって失礼な言い方ね?!
 でも怪しいから関わりたくない。私は逃げるわ!

 
「ああ、あのお嬢ちゃんかと思ったんですが、どうやら勘違……」

「なんだと」
 

 怪しいフードの男は、ザ、悪役の話を最後まで聞かず、私の方を見た。

 
「そこの」
 

 そして、近づいてくる。
 そこのって何よ。礼儀ってものを知らないのっ?

 
「聞いておるのか、女」

「あのねぇ、見ず知らずの女性に対して失礼だと思いませんの?! だいたい、レディーに話しかけるときは名を名乗りなさい! 顔も見せないなんて無礼だわ!」
 

 言い切ってから、やってしまったと頭を抱える。

 
「おいおい、嬢ちゃん。嬢ちゃんこそ口の利き方気ぃつけな」
 

 ザ、悪役の垂れている目が、途端につり上がった気がした。
 て、ちょっと待ってよ。手、手! なんで剣に手を伸ばしているわけ!?

 不幸のアメリアの人生、踏んだり蹴ったりね。
 これじゃあスキルを試す前に死んじゃうじゃない!

 身の危険を感じて一歩後ろに下がると、フードを被っていた男が、ザ、悪役を片手で制した。

 
「よい。確かに女の言う通りだ。失礼した」
 

 男は、そう言いながらフードに手をかけた。

 
「私は、アールス王国の第一王子、エルク・C・アールスだ」
 

 フードの奥から現れたのは、生きた妖精と見紛うような、美しい男。
 サラリと揺れる銀色の髪。瞳は吸い込まれそうな紫色。
 大きな瞳は猫のようで、鼻も、口も、全てが作り物のように美しかった。

 神秘的、というのは、この人のためにあるのだろうと、そう思った。

 
「して、主の名は?」

「あ……アメリア・ド・ファーレスト、です」
 

 勝手に口から言葉が出た。
 しかも、ミドルネームもラストネームも答えてしまった。
 もう公爵家とは縁を切ったというのに。

 
「そうか、アメリアというのだな」

「は、い……そうです」

「して、アメリア。お主、結界持ちか?」

「……は……、はい?」
 

 危ない危ない。
 勝手に答えそうになってしまった。
 ハッと我に返って身を引く。

 こ、この男、なんかよくわからないけど、危険だわ……!

 
「ほぅ、そうか……お主が結界持ちか」
 

 美しすぎる男、エルクは、そう言って少年のように笑った。

 び、美人……!
 て、そうじゃなくて……っ!

 どうしてバレたの!?

error: Content is protected !!