08 破滅ルートからは逃れられないようです

「おお、意外とすぐに見つかるものだな」
 

 怪しさの塊である美男子は、そう言って嬉しそうに笑いながら、くるりと背後の、ザ、悪役を振り返る。

 
「さすがエルク様! もう結界持ちを見つけるとは……っ。マルクは、マルクは感激です!」
 

 ザ、悪役……長いからマルクね。勝手に呼び捨てにするわ。
 そのマルクは、右腕で両目を覆い、「うぉぉぉ!」と大げさに泣き真似をする。

 いや、それよりも待って。どうして結界のことがバレたの?
 そもそも、この人たち……何者!?

 アールス王国って言ったかしら。

 アールス王国って、どこ!?

 
「して、アメリア」
 

 美男子エルクは、再び私の方を向いて、無邪気な少年のように笑う。

 う……美青年なのに、かわいいっ……!

 美少年エルクはそっと、これまた白く美しい手を私に差し出してきた。

 
「私と一緒に来てはくれないか?」

「は……はい?」
 

 え、今、この人なんて言ったの?
 一緒に来てくれ? どこに? ええええ?

 
「あ、の……よく、意味がわかりません。結界というのも、何かの間違いではないでしょうか?」
 

 とりあえず白を切って乗り越えるしかない。

 美男子エルクは大げさに目を見開いた。
 この人、いちいち仕草がかわいいな。ちょっと母性をくすぐられてしまう。危険だわ。

 
「なんとお主、スキルを知らずに使っていたのか」

「……スキル?」
 

 やっぱり、この人たち、スキルのこと知っているのね?
 ならちょっとは情報を引き出せるかしら。

 
「先ほど、私のスキルから身を守っただろう」

「………………はい?」
 

 たっぷり間を空けて、そう答えた。
 身を守った? 私が? いつ?

 頭の中が疑問符で埋め尽くされる。

 あれ。
 でも待って、ウィンドウ……ウィンドウが表示されてなかったはず。
 スキルが使用されたら、ウィンドウが表示されるんじゃなかったの?

 
 ……まさか。
 今のは戦闘ではなかったから表示されなかったって、そういうこと?!
 なにそれ、不便なシステムね!

 確か、あの乙女ゲームの戦闘システムは、本当に戦う戦闘と、会話での戦闘……相手を言い負かすものの二つがある。お父様との戦闘はたぶんこれね。
 スキルはその時は確かに表示されるのだけれど……通常の会話イベントでは確かに表示されなかった。
 そもそも、通常の会話イベントでスキルを使用する機会なんてないもの。

 
「この辺りの地では、スキルが知られていないというのは本当だったのだな」

「あの、待ってください。あなたのスキルって……」

「うん? 私のスキルは操りだ。声で人を操ることができる」
 

 は、はいぃぃぃ?
 なにそのチートスキル! 怖い、やっぱりこの人、危険だわ!

 
「エ、エルク様……! そのようなこと、ほいほいと話されては……っ」

「よい。どうせアメリアは連れて行く」
 

 え、待って、連れて行くってどこに!?
 勝手に会話進んでいるけれど、私許可してないね?!
 

「あの……私はどこに連れて行かれるのでしょう?」

「おお、まだ話していなかったな」
 

 うっかりうっかりと聞こえてきそうな微笑みで、エルクは私を見た。
 この顔、もう私が絶対ついて行くと思い込んでいる。
 まあ、国外逃亡も考えていたし、そのアールス国という場所によっては、ついて行っても――

 
「主たちが北の大地と呼ぶ大陸、サハルト大陸だ」

「………………」
 

 ちょっと待って。何これっ。

 新たな人生で、不幸の道から絶対に逸れてやると決めていたのに。
 調香を使ってお店でもやろうかななんて思っていたのに。

 なのにっ!

 どうしてアメリア破滅ルートをなぞっているのよぉぉぉぉぉ!?

error: Content is protected !!