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10 ステータスは見てはいけません!

「イリュージョン」
 

 火の爆ぜる暖炉の付いた部屋で、ポンッとウィンドウを表示させる。

 
【ステータス】
 名前:アメリア・ド・ファーレスト
 種族:人間
 レベル:2
 スキル:調香・結界
 称号:婚約破棄されし者・破滅へと進みし者

 
 
 ……ん?

 何か、称号が増えているけれど……。
 そういえばさっき、ウィンドウらしき物が見えたような。
 って、破滅へと進みし者ってどういうこと!? やっぱり破滅なの!?

 
「はぁ〜、破滅かぁ……。まぁ、レベル2じゃ破滅もありえそうね。そもそも、あの王子たちはレベルいくつなのかしら」
 

 王子なんて顔にも手にも傷ひとつ付いていなかったし、マルクに至ってはどこぞの軍隊の軍人よりも強そうだ。
 やっぱり死の大地からくるほどなのだ。
 常人とはレベルが違うのかもしれない。

 
「私、大丈夫かな……」
 

 不安になってきた。
 せめて、自分のスキルの、戦闘への応用方法のデモンストレーションをしておこう。まだ死にたくないもの。

 結界はまぁ、身を守るとして。
 調香――これは、戦闘に使えるのだろうか。
 調香ってことは匂いを作り出すということだと思うけれど、匂いなんて……と、そこまで考えて閃く。
 これも前世の記憶が蘇った賜物ね。
 小説や漫画やゲームに触れていて、本当によかった。

 
 さて、あとは明日、美男子王子のところに行って……。と考えてたところで、テーブルの上に置かれている号外が目に入る。

 
「ほんと、あんたみたいなバカ王子、願い下げよ」
 

 人のことこんな風に書いてくれちゃって。
 まぁ、こう書いた方がフィルを婚約者にしやすいからだろうけれど。私の方がよかった、なんて反発も起きないだろう。

 私かどんな思いをしようと、もうどうでもいいってことね。

 
「ほんっと、恩を仇で返すなんて、サイテー……」
 

 幼いころ、何にもできなくてワンワン泣いていたバカ王子を思い出して、号外に向かって舌を出す。そしてそのまま手に取ると、何もかもを断ち切るように号外を暖炉の火にくべた。

 
「明日からは死闘の日々よ!」
 
 
 
 

◆◆◆◆
 
 
 

 次の日、再度念入りにデモンストレーションをして、私はお昼すぎにエルクが泊まっているという宿を訪れた。
 全て木製作りで、一階は食堂、2階が宿になっているようだ。
 王族だというのに、ずいぶんと質素な宿に泊まるのね。ここって、かなり大衆向けじゃない?

 一応帽子をかぶってきたけれど、婚約破棄された令嬢として顔がバレてしまっているから、宿の人に話しかけにくい。

 さて、どうするか……。

 と悩んでいると、前に影ができた。邪魔になっているのかと思って避けようとすると、

 
「来ると思っていた。アメリア」
 

 名前を呼ばれて顔を上げる。
 そこには、嬉しそうに破顔した美しい顔があった。

 
「エルク様……よくおわかりでしたね、私だと」

「主の金髪は美しい。すぐにわかった」

「そ、そうですか」
 

 ストレートに褒める人ね!
 そんな妖精みたいな顔の男の人に褒められても複雑な気持ちになるけれども、決して悪い気はしない。

 
「食事はしたか?」

「昼食はまだです」

「ならば共にどうだ」

「はい、ご一緒させてください、エルク様」
 

 そう言いながら礼をすると、エルクは口を真一文字に結んだ。この顔はなんだろう。何か考えてる?
 頭の中で思考をめぐらせていると、エルクが口を開いた。

 
「アメリア、互いに敬語はなしだ」

「……え、ですが」

「アールス王国内での、結界持ちの地位は高い。国の生命線だ」
 

 そう言われると、プレッシャーがすこいんだけれども。大丈夫だろうか……。私、レベル2だよ。

 
「私にも遠慮なく話せ」

「は、はぁ……まぁ、そういうことでしたら様付けは止めます」

「うむ」
 

 どこか誇らしげにうなずくエルク。
 本当に、作り物みたいなのに、仕草がいちいち可愛いというか、この方が王子だなんて、アールス王国とはどんな所なのだろう。

【エルク・C・アールス、マルク・メロンドが仲間になりました】

 ん?
 そういえば、この乙女ゲーム、仲間になるとその仲間のステータスも見れるんだっけ。死の大地を旅する者のレベルとか気になってたのよね。

 私は小さな声で例の呪文を呟く。

 ポンッとウィンドウが表示された。

 私のステータスの横に、二人のステータスが――

 
 
【ステータス】
 名前:エルク・C・アールス
 種族:人間
 レベル:58
 スキル:操り・感知・気迫・治癒
 称号:導く者・王位継承者・癒し手・鈍感・惑わし者・冷徹な殺戮者

【ステータス】
 名前:マルク・メロンド
 種族:ハーフ魔人
 レベル:62
 スキル:業火・暗殺・剣技
 称号:破壊神・全てを薙ぎ払う者・見捨てられし者・王の守り手

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