6/3 中編新作公開しました

11 なさねば成らぬ何事も

 私はステータスウィンドウを見たまま固まっていた。

 私の横に表示されている、エルクとマルクのステータス、おかしい。目の錯覚じゃ、ない……?

 れ、レベル、58?
 マルクにいたってはレベル62!?
 ちょっっと、待って?! 私、レベル2よ?!

 落ち着いて、待って、よく考えるのよ。

 通常のRPGゲームでいうと、レベル2は初期ね、とっても初期。スライムとか倒してレベルを上げる期間ね。
 対してレベル58……。
 これって、ほぼラスボスの前とか、下手したらラスボスに挑めるレベルよね?!
 絶対そうよ! だって、あの乙女ゲームはレベル30くらいでクリアできたもの!

 冗談じゃないっ!
 このまま死の大地に行ったら、私は間違いなく死ぬ。破滅まっしぐらだわ!

 
「アメリア? 何をしているんだ」
 

 私が立ち止まったまま動かないことに気づいたのか、エルクが不思議そうに私を見ながら近づいてきた。

 あ、そうだ。このウィンドウ。
 エルクたちはスキルについて知っているんだから、このウィンドウの正体も知っているかもしれない。

 
「ねぇ、エルク」

「うん?」

「エルクたちは、これが何かわかる?」
 

 私は透明なウィンドウを指さした、が。

 
「……テーブルのことか?」

「…………はい?」
 

 え、ちょっと待って。どういうことっ?

 
「テーブル、じゃなくて……。あ、エルクたちはスキルをどうやって確認しているの?」

「ああ。この近辺にはないのだな。コレだ」
 

 そう言ってエルクは、自分の服の下に手を入れ、首から下げられているカードホルダーのようなものを出した。
 こちらに向けてくれるから、のぞき込んでみるけれど、ただ真っ白なだけで何も書かれていない。

 これが、なに?

 訝しげにエルクを見上げると、エルクは「うん?」と少しだけ微笑んで、人差し指でトントンと真っ白のカードを示した。
 そして――

 
「イリュージョン」
 

 エルクが例の言葉を呟くと、真っ白のカードに文字が浮かび上がった。
 なにこれすごい。なんでもありなのね。

 と、言うか……これ、私のウィンドウに表示されているのとほぼ同じ?
 つまり、エルクたちはこの謎のウィンドウは、見えないっ?

 
「こ、これは、なんなのですか?」

「アールス王国にある巨大な木から作られる、スキルカードだ。民は皆、このカードを使って自らの持っているスキルを把握する」
 

 なんて便利な……。

 
「スキルを持っていない者もいるが……」
 

 そこまで言って、エルクはシュンっと肩を落とした。なんてわかりやすい……。言わなくとも理解できた私がすごいのだろうか。
 いいや、顔に、「差別、なくしたい」と書かれている。
 仕方ない、なぐさめるか。世話のやける……。

 
「エルク、私の知っている言葉に、なさねば成らぬ何事も、というのがあります」

「ほぅ?」
 

 お、目がキラキラと輝いた。
 新しいことを知るのが好きなのね。

 
「どんなことも強い意志を持ってやれば、必ず叶うみたいな感じです。現に、私を見つけることができたじゃないですか。それに、ついて行く気なんて全くなかった私の意志を変えた。そういうことです」
 

 言ってしまってからなんだか恥ずかしくなったので、「お腹すきましたね」と先に歩き出す。

 すると、隣にエルクが並んだ。

 チラリと横目で見ると、ホクホクとした満足そうな笑み。

 
「元気、でたんですか」

「そうだ」

「そうですか」

「アメリアのおかげだ」
 

 少年みたいにくしゃりと笑うのは、ちょっと反則じゃないですか?
 心臓が、ぐしゃっと、鷲掴みにされたような気がした。

 ストレートすぎるのも考え物ね。
 あまりにも純粋すぎて、王に向いてなさそうな気もしたけれど、こうもハッキリ言われると逆に尽くしたくなってくるから、ある意味王向きなのかもしれない。

 
「そういえば、エルクは今おいくつなんですか。レベルは見えましたけど。58、と」
 

 私は58を強調した。
 レベル差がこんなにあるんだ、こんな見た目をしてても実は38歳とか……。

 
「歳は、今年で16だ」

「…………はい?」
 

 えっ、待って、嘘でしょう?

 同い年!?

 えっ、同い年でレベル2とレベル58!?
 

 この人……こんな純粋の塊みたいな目をして、いったいどんな壮絶な人生を送ってきたのっ?!

error: Content is protected !!