6/3 中編新作公開しました

14 調香が魔のスキルなんて聞いてません

 その後、エルクを追いかけてきたマルクとも合流し、私たちは話し合いをすることにした。

 森の中で円を描くように座り込み、ひそひそと会議をする。

 私はもう、包み隠さず話すことを決意した。

 
「すばり、言わせていただきます」

「うむ」

「北の大地は、私たちの国では死の大地と呼ばれています」
 

 エルクとマルクが顔を見合わせた。

 私は簡単に死の大地と呼ばれる理由を説明した。
 ココとは次元が違うと。エルクたちの国の存在すらも知られていないこと。これまで戦闘と無縁だった私が、そんな場所で生き延びられる保証がないこと。

 
「お嬢の言うことも一理あると思いますよ、エルク様」

「うむ……確かに、この近辺は魔物が少ない」
 

 そうそう。それに……。
 チラリと、マルクを見る。
 種族、ハーフ魔人。
 そもそも、魔人って何? そんなのいるの? どういう存在? そんな種族ここにはいないけれど。
 ステータスに種族があった時点で変だとは思っていたのよね。人間しかいないのなら種族なんて必要ないもの。
 魔人という名からして、どう考えても危険な存在としか思えない。まさか、死の大地は魔人がウヨウヨしてるとでも言うの?

 まあ、魔人のことはまた今度聞くとして。マルクのスキルカードを見せてもらっていない私が、ハーフ魔人だということを知っていたら変だもの。下手は踏まない。いずれ、機会が来たら聞き出す。

 今はそれよりも……。

 
「いいですか? 私はまだレベル4! 4ですよ!?」

「レベルが上がったのか」
 

 呑気に拍手するエルクに、ありがとうございますと頭を下げて、ハッする。
 のほほんとした空気に呑まれている場合じゃない。これは私の命がかかっているのよ。

 
「お聞きしますが」

「なんだ?」

「エルクさ、ま……」

「…………」

「コホン、エルクの国では、普通レベルはどのくらいあるのですか?」
 

 エルクとマルクは顔を見合わせ、首を傾げ合う。
 動作がそろってる……仲良いわね。

 
「マルク、記憶してるか?」

「はぁ、曖昧ですが、俺もエルク様も、レベル的には中の上くらいでしょうか」
 

 ……はい?

 え、ボス戦もいけそうなレベルがあって、中の上?!
 死の大地、恐ろしい場所ね。
 

「ただ、スキル数は多い方ですね」

「そうなの?」

「うむ、通常、スキルは持っていても一つだ」
 

 この二人、三つだか四つ、持ってなかったっけ?

 
「アメリアは……」
 

 エルクは言葉を切って、指を顎に当てる。
 指を顎に当てるの、考える時の癖かしら。わりとよく見る気がする。

 きっと、さっきの戦闘を見ていたから、私が持っているスキルが結界だけではないと、気づいたのだろう。まあ、隠す気もないし、いいけれどね。

 
「私は、結界と調香を持っています」
 

 私がそう言うと、エルクとマルクの表情が固まった。
 ……え、なになに?
 エルクが目を見開いたまま、まんまるの紫の瞳で私を見る。

 
「なんと、主は調香も持っていたのか」

「え、まぁ、はい……。あの、何か?」
 

 エルクはマルクと顔を見合わせ、少し気まずそうにしていたが、やがてうなずき合って口を開く。

 な、なんか怖いんだけれど、大丈夫、よね?

 ゴクリと唾を飲む。

 
「調香は、かつて厄災をもたらした、魔のスキルと呼ばれている」

「……………………はい?」

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