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16 到着!アールス王国

 ここを出たら、数日後にはアールス王国?

 そんなこと、どう頑張っても不可能よ。だって、海を渡るのよ? 
 て、あれ……。
 そもそも、北の大地行きの船なんて出ていない。
 北の大地に好んで行く者など、この世にいないもの。

 それとも、エルクたちの船、とか?
 まあ、王族だし、それならありえると思うけれど、それでも数日後というのは無理だ。

 
「アメリア?」
 

 グルグルと考えていると、心配そうに眉を下げたエルクが、私の顔をのぞき込んできていた。

 って、近いっ……!
 私は驚いてのけぞった。びっくりした。鼻と鼻が触れそうなくらい近かった。この王子、ほんと能天気だ。

 
「そ、そんなにすぐに、北の大地に行けるものなの?」

「ここの近くの村に、移動持ちを待機させている」

「……移動持ち?」

 
 聞き返してから、気づく。
 まさか、瞬間移動ってこと?!

 
「一度訪れた場所なら、自由に行き来ができる」
 

 やっぱり、瞬間移動ね?
 自分の持っているスキルを把握しているのって、それだけでとんでもなく有利らしい。

 
「アメリアがいいのであれば、すぐにでもココを立ちたいのだが」
 

 まずい。計算が狂う。でも、瞬間移動なら、一瞬でアールス王国ってことよね。
 それなら、さほど危険はないのでは?

 
「わかった。でも、せめて10までは上げるわ」

「うむ、問題ない」
 

 レベル10というのは案外簡単で、たった一日でレベル10まで上げることができた。
 まあ、最初はレベル上がりやすいというのがRPGの常識よね。

 
 
 そしてついに、私は生まれ育った国を後にすることになる。

 あまり、感動とか、寂しさとかはなかった。
 それよりも、きっと、誰も見たことのない北の大地にある国に、興味を惹かれていたからだ。

 さようなら、私の故郷。
 今までお世話になりました。
 

 私は先に立って待っていたエルクたちの後を追った。

 
 そして、エルクの言う移動持ちがいるという村まで、歩くこと三日。
 なんとも寂れた村に到着した。
 

「ここに、いるの?」

「うむ。ああ、いた。あやつだ」
 

 エルクの示した先に、視線を向ける。
 そこには、エルクとはまた違った美を持つ男が、切り株に腰掛けてぼんやりしていた。
 漆黒の髪と、尖った耳が目を引く。

 って、尖った、耳!?

 私が立ち尽くしたまま男を凝視していると、私の横をエルクが駆けて行った。
 

「アルジュ!」
 

 アルジュと呼ばれた男は、顔を上げ、キョロキョロと辺りを見回す。

 
「こっちだ、アルジュ」

「あ、王子。お早いお帰りで」
 

 男はエルクを見た後に、その後ろにいる私とマルクを見た。

 
「マルクも、おかえり。で、それ? 目当てのニンゲン」
 

 なんとなく、人間の響きが嫌な感じに聞こえたのは、気のせいだと思いたい。

 私は歩みを進め、黒髪の男アルジュの前に立つと、丁寧に膝を追った。

 
「アメリア・ド・ファーレストと申します」

「ふーん」
 

 ふーんって、それだけ?! 別にいいけどね!?
 そっちが無礼ならこっちも無礼に見るわ。

 改めてアルジュを見る。尖った耳に、瞳が……赤?
 赤い瞳の人なんて初めて見た。
 エルクは妖精のような容姿だけれど、こっちはさながら魔王ね。
 黒い髪に赤い瞳。しかも目は切れ長で鋭い印象だし、端正な顔立ちだけれども、とっつきにくそうな雰囲気。

 
「ま、挨拶なんていいでしょ。どうせ、すぐ会わなくなるんだし」
 

 いちいち癇に障る人ね。いいけどねっ!?

 
「うむ、早速帰還しよう」

「はいはい、手間賃、弾んでよ」

「わかっている」

 
 エルクはうなずくと、私に手を差し出して来た。

 
「……なんでしょう」

「移動は体が触れていないとできない」
 

 そういうことね。
 私は差し出されたエルクの手を掴んだ。もう片方の手はマルクと繋ぐ。

 丸い円になって――

 
「いくよ」
 

 そんな声が聞こえた、と思ったら、もう景色が変わっていた。

 アールス王国、王宮内、だろう。
 目印なのか、巨大な魔法陣のようなものの上に、私たちはいた。

 
「す、ごい……」

「着いたぞ、アメリア。ここが、アールス王国だ」

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