6/3 中編新作公開しました

19 こんな結末、ありですか?

 何の説明もなしに、アルジュに「来て」、と瞬間移動させられた場所。
 石の壁が辺り一面を覆い尽くしていて、その他は何もない。薄暗くて奥はよく見えなし、なんだか埃っぽい。どこかの倉庫?

 まさか、国の秘密を知ったからには抹殺する、とかじゃないわよね? いや、そんなバカな。でも北の大地の国の存在は、知られていないわけだし。

 ……まさか、ね?

 そんなことはないと思いつつも、このまま置き去りにされてしまってはたまらないと、アルジュの手をキツく握りしめる。

 何があっても絶対、この手を離さないっ!

 そう思っていると、ザッと、背後から人が歩く音がして、振り返る。

 フードを目深に被った、怪しい――

 
「……エルク、様?」
 

 初めて出会った時のエルクと、同じ格好をしていた。

 怪しいフードの人物は、ゆっくりと真っ白の手をフードにかけ、それを取り払う。
 現れたのは、銀色の髪に、大きな紫の瞳。そして、作り物のように美しい顔。
 間違いなく、エルクだった。

 
「どう、して?」
 

 唇が震えた。

 
 不要だと、あなたはそう言ったはずなのに。

 私を捨てたでしょう?

 なのに。

 どうして、ここに。

 
 エルクはくしゃりと顔をゆがめて、私を真っ直ぐに見つめた。

 
「すまない、アメリア」
 

 すまないって、なに?
 アルジュがいるということは、もしかして国に返してくれるとか?
 それならそれで、悪くはない。

 
「国に、返してくれるのですか」

「それはできない」
 

 ……はい?

 え、今否定した? できないって言った?
 いや、聞き間違いかしら。

 私はそうだと言った程で、話を進めることにした。

 
「あ、では、早く……あの寂れた村でいいですよ。あとはなんとかなるので」

「アメリア」

「…………」

「それはできない。すまない」

「……どう、して」
 

 いろんなものが、溜まっていたんだと思う。
 不幸が積み重なって、どこかで吐き出してしまいたかったのかもしれない。

 
「私が、家なき子だからですか? 帰ったって、居場所なんてないと、そう思っているのですか? 婚約破棄されて、汚名を着せられて、馬鹿な女だと、そう思っているのですか?」

「違う」

「こんなことなら、着いてくるんじゃなかった! あなたなんて、信用しなければっ」
 

 言ってから、ハッと口を押さえる。
 エルクが、今にも泣いてしまいそうに、顔を歪めていた。

 どうして、あなたがそんな顔をするのですか。

 泣きたいのは、こっちなのに。

 
 重たい沈黙が流れる。

 
「すまない、私が、無計画だったのだ」
 

 そんな顔をするなんて、どこまで卑怯なの。そんな顔をされたら、私が文句を言えないこと、わかっているんでしょう?
 グッと奥歯を噛み締めて、言葉を飲み込む。

 
「お嬢、エルク様ばかり責めなさんなって」
 

 ザッと、暗がりの奥から姿を現したのは、金茶の髪に、鍛え上げられた体。
 短い間だけど共に旅した男――

 
「マルク! いたの!?」

「最初からな。俺とエルク様、アルジュが王宮を出た時は、おばばは瀕死だった。とても話せる状態でもなく、俺たちは急ぎ代わりの者をと、結界持ちを探しに出た」
 

 ふーん?

 
「私の居場所は、どうしてわかったの?」

「直感というのがあってな、最初にどこの街に結界持ちがいるかを調べて来た」
 

 スキルって、本当に恐ろしいわ……。

 
「まあ、だからなんというか……」
 

 マルクが、気まずそうにする。視線も泳いでいるし、これは相当後ろめたいことがあるに違いない。

 
「もういいわ。この際ハッキリ言って」

「さすがお嬢、男前だな!」
 

 私、女ですけどね?
 なんなら元公爵家の令嬢ですけどね?
 まあ、だからこそ動揺は心の奥底に隠せるようになったけれども。

 
「あー、だからな、つまり……レベルが……」

「レベル?」

「レベルが、足りないんだと」

「…………」
 

 私は、そっと、マルクを見た。引きつった顔をしていた。

 私は次に、エルクを見た。サッと視線をそらされた。

 
 私、レベルを上げたいと、何度も言いましたよね???

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