21 称号、王の叱責者

 なんと、結界持ちの任を担うには、レベルが100必要なのだと言う。

 ちょっっと、待って。

 100って、カンスト? それともその上がいるとでも言うの?
 それより現結界持ちのあの老婆は、レベル100もあるの? どんな血の滲むような努力を……。というか最強?
 ああ、もっと敬っておけばよかった。

 
「アメリア?」

「レベル100って、エルク様たちより上ではないですか」

「…………そうだ」
 

 なぁにが、「そうだ」よ!
 簡単に言ってくれちゃって!

 私が不機嫌になったのに気づいたのか、エルクは焦った顔をして、アルジュを呼びつけた。

 
「アルジュを供に付ける。アルジュはレベル115だ」

「……はい?」
 

 レベル100の上があるというの?
 というか、あんな綺麗な顔をして、レベル115?!
 老いも感じないと言うのに。やっぱり魔王だわ。

 
「王子、確かに俺はレベル115あるけど、それと比べちゃかわいそーでしょ」

「……どう言う意味?」
 

 そう問いかけると、アルジュが不思議そうな顔をして私を見た。

 
「あれ、気づいてなかった? 俺、魔人だから」

「……はい?」
 

 魔人。とは。
 否、該当なし。

 まさか、こんなにあっさり魔人について聞く機会がやってくるとは。

 
「あの、魔人って、なんでしょうか」
 

 エルクが驚いたように私を見た。

 
「なんと、魔人を知らないのか」

「私の国や近隣諸国には、そのような種族はいなかったと記憶しています」

 
 エルク、アルジュ、マルクの三人は顔を見合わせた。
 なになに、魔人って、そんなに普通の存在なの?

 
「魔人と言っても、そう人間と変わりはない」

「そうそう、ちょっと寿命が長いくらい」

「スキルに自然界の力を持っているのも特徴だな」
 

 へー、そんな存在がいたのね。耳が尖っているのも、魔人だからってことかしら。
 自然界の力って、火とか水とか? そういえばマルクは、業火とかいうスキルを持っていたっけ。

 寿命が長いなら、レベル115でも変ではない、の? わからない。レベルの基準がわからない。だって、私はまだレベル10だもの。
 

「アルジュは移動と通信持ちだ。それと風魔もある」
 

 移動と通信って、つまりは瞬間移動と電話ってこと?
 密偵とかに便利そうなスキルね。ちょっと羨ましい。

 ふんふんとうなずいていると、チラリとエルクが伺うように見てくる。
 本当に、思っていることがダダ漏れね。「引き受けて、くれるか?」と、顔に書いてある。

 
「まったく、本当に、仕方のない人ですね」
 

 ほんと、どうしようもない大バカだ、私は。
 他の人にお願いしますと言ってしまえばいいものを、こうして無謀ともいえることを引き受けようとしているのだから。

 
「行ってくれるのか」
 

 パアッとエルクの顔が輝いたと思ったら、途端に肩を落とす。

 今度はなに?

 
「こんなことを頼んでおきながら、すまない。私は、共に行くことができない」

「ああ、なんだ。そんなことですか。いいですよ」
 

 軽くうなずくと、エルクが信じられないものを見るような目で私を見た。

 ……え?
 なんでそんなショックを受けたような顔をするの?

 私何か返答間違えた?

 だって、この国の王子でしょう? 何日も、下手したら何ヶ月、何年と、国を空けるわけにはいかないじゃない。
 そのくらいの分別、ついてますけど?
 

「くっ、はっはっは! だから言ったでしょうエルク様」

「うむ……」

「ふふ、俺とマルクの勝ちだね」
 

 ……はい?
 ガックリ肩を落とすエルクに、ニヤニヤ笑いながらエルクの肩や背中を突っつくマルクとアルジュ。
 仲がいいのは大変結構ですが、まさか。

 
「人を賭け事に使ったわね!?」
 

 怒鳴ると、エルクがギョッとした顔で首を振る。

 
「違う、私は、主がついて来て欲しいというなら、ついて行こうかと……」

「はぁ? 一国の王子なんだからもっとシャンとしてくださいませんことっ? そんなことするくらいなら、もっと立派な王子になってください! そんな同情のようなことをされても、ちっとも嬉しくありません!」
 

 一気に言い切ると、エルクはポカンとしていたが、やがて観念したように肩を落としてうなずいた。
 

「主の言う通りだ」
 

 全く、本当に抜けてるというか、考えなしというか。
 私がついてきて欲しいと言うと、本当に思ってたのかしら。これでも公爵家の出だから、国のことを考えるようにって教育を受けているのだけれど。
 ただのレベル上げの旅に王子を付き合わせるなんて、どう考えても無理でしょう。

 
「王子、めっちゃ尻に敷かれてるじゃん」

「エルク様はお嬢に頭が上がらないみたいです」
 

 そこ、聞こえてますけど?
 

 ジロリと睨むと、二人はサッと視線をそらす。

 
「アメリア」

「なんですか、エルク様」

「……もうエルクとは呼んでくれないのだな」
 

 ……まさか、さっきから名前を呼ぶ度に微妙に傷ついた顔してたの、それが原因?!
 世話が焼けるというか、素直というか、ほんと。

 仕方のない人。

 ふっと肩の力が抜けて、力なく笑う。

 
「あなたの国の力になれるよう、最善を尽くします。エルク」
 

 そう呼びかけると、エルクは少年みたいに笑う。
 そうだ、この笑顔に惑わされたんだ。
 私は、本当、大バカ者に、弱い。

 
「主の帰る場所を、作って待っていよう」

「もし私が死んでも恨まないでくださいね」

「…………それは、許さぬ」
 

 拗ねたようにそんなことを言うエルクに小さく笑う。

 
 まあ結局、行くところがないのも行くあてがないのも変わらないけど、帰る場所があるなら、少し、頑張ってみるのも悪くはないかな。

 果てのない旅になりそうだけれども。

【称号、王の叱責者 を獲得いたしました】

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