6/3 中編新作公開しました

26 感動の再会?恐怖の再会?悪魔の再会?

【応用スキル、二重結界を使用しました】

 ウィンドウが表示されたのを確認して前を見る。すぐ目の前に、ガラスのような壁があることに気づいた。
 これ、さっきの技能の効果?
 もしかして技能って、一度獲得したらずっと発動されているものなのだろうか。

 首をひねりつつもそれは一旦置いておき、また深く息をして集中する。
 向こうの結界の中。
 そこだけに調香!

【スキル、調香を使用しました】

 しばらくじっと待つ。
 やがて、勢いよく飛んでいた芋虫たちの速度が遅くなっていき、ボタボタと地面に落ちた。

 うわぁ、けっこうな数いたんだ。地面が芋虫だらけ。ピクピクと痙攣しているかのように動くメタル芋虫たち。
 う、これは、あんまり見たくない光景ね。

【メタルキャタピラーを討伐しました】

【レベルが39になりました】

 えっ!

 表示された透明なウィンドウに釘付けになる。
 レベル、39?!
 ええっ、もうっ!?

 確かにアルジュが簡単にレベルが上がるとは言っていたけれど、これは予想以上! 大収穫ね!

 
 メタルキャタピラーは、その後も次から次へと現れ、もうここは経験値の屍がゴロゴロと転がる天国。
 私は結界と調香の連携で、メタルキャタピラーに一切手を触れることなく、この場を芋虫で埋め尽くすことに成功した。

 しばらくすると、目の前がぐらっと揺らめいた。片手で頭を抑える。と。

 
「そろそろ帰るよ」
 

 その声でハッと顔を上げる。

 
「え、帰るの?」

「アンタ、見かけによらず、けっこうエグいことするよね」

 
 言いながら、アルジュは転がる芋虫の山を見た。若干アルジュの口元が引きつっている気がする。

 
「そう? まだまだいけるけど」

「それは勘違い。自分の力量がわからないなら、まだまだだよ」

「力量?」

「いいから。それに、ここを狩り尽くすのはだめ」

「え、そうなの?」
 

 驚きつつ、もうほとんど芋虫のいない草原を見る。

 
「ここはレベルアップには最適だから。いなくなったら困るわけ」

「なるほど?」
 

 全滅しない程度に生かしておくってことかしら。
 そしてまた増えたら狩る、と。

 
「どっちの方がむごいのよ……」

「何か言った?」

「なんでもないわ。それより――」

 
 ぐらっと目の前が揺れて倒れそうになる。

【スキルが解除されました】

 なにこれ、貧血?

 膝をつきそうになったところを、グッと腕を引っ張られる。
 霞む視界の中、アルジュが呆れた顔をしてるのが見えた。

 
「だから言ったじゃん」

「う……気持ち悪い」

「スキルの使いすぎ」

「そういうの、先に言って……」
 

 戦う前に言って欲しかった。気持ち悪いと自覚したら、なんだが芋虫の臭いも鼻につくような……。うっ。

 
「アルジュ、帰る……」

「そのつもりだけど」
 

 アルジュがそう口にしたと思った次の瞬間、ふわっと匂いが変わった。
 これは……森の匂い?
 目を開けると景色が草原から森に変わっていた。空まで覆い尽くすような森。木の隙間からかすかに陽の光が降り注ぐ。
 結局草なのは変わらないのね。

 
「葉っぱ好きよ……」

「何言ってんの。ホラ、少しは歩いてよね。すぐそこ街だから」

 
 そう言われて、顔を上げる。
 あ、れ。そう言われると、なんだか、この景色見覚えがあるような。

 そのままアルジュに引きずられるようにして歩いていくと。

 
「ここ……」

「知ってる場所だった?」

「何回か来たことあるわ」
 

 ここ、死の大地じゃないのね。
 だってここ、私の故郷の隣の国。

 シルディット王国王都、プレゼリア。
 とにかく水が綺麗で、自然も豊かな美しい国。正直、移住候補にしたかった。隣の国と言う理由で避けるしかなかったけど、それでも住みたいと思うくらいには綺麗な街だ。

 
「どうしてここに?」

「さっきの場所から近かったから」

「そうだったの?」

「そう。それに」

「…………」

「空気が似てる方が、落ち着くでしょ」
 

 アルジュが流し目に私を見下ろした。真っ赤な瞳を見つめ返して、パチパチと目を瞬く。
 もしかして、私が慣れ親しんだ場所に近くしてくれたってこと?

 なんてわかりにくい。

 
「ありがとう」
 

 アルジュはふいと顔を背けて歩き出す。
 というか、耳、耳! 隠さなくていいのっ?

 
「ちょっとアルジュ……!」
 

 その背中を追いかけようと足を踏み出して。その声は、聞こえた。

 
「ファーレスト公爵令嬢?」
 

 驚いて、声のした右手を向いた。
 スローモーションのように思えた。

 視線の先にいた、ふわふわの金の髪をしたその人は。
 ぴっちりと首元まで締められた見覚えのある王族の衣装を着て、まるで、感動の再会とでも言うかのように、目をわずかに見開いて私のことを見ていた。

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