6/3 中編新作公開しました

27 追憶

 私と似たような色の黄金の髪。ふわふわしたクセ毛。ブルーの瞳は水晶玉のように透き通っている。
 というより、あまりじっくり見る機会はそうなかったけれど、瞳の色といい、この人全体的に私と顔立ちが似ているような。
 まあ、もとを辿れば血は同じなのだから、似てるのも当然といえば当然かも。

 
 あの日。

 婚約破棄をされた日、私を追って来た第三王子、クリード・K・ユベール。

 あの国の人間と。
 あの国と。
 もう二度と、関わるつもりなんてなかったのに。
 

「クリード王子殿下。ごきげんよう。このような姿でご挨拶しますことお許しください」
 

 お世辞にもドレスとは言えないワンピースの裾を持ち、それでも気品だけは損なわないようにしようと、精一杯の礼をする。

 
「ファーレスト公爵令嬢、今までどこにっ、みんな探しているっ」
 

 クリード王子は体を細かく震えさせながら、少し声を押し殺してそう叫んだ。

 今までどこに?
 追い出したのはそちらでしょう。
 みんな探している?
 罪人として殺すため?

 私は礼をするのを辞め、真っ直ぐ背筋を伸ばしてクリード王子と対峙する。

 
「クリード王子殿下、私はもう、公爵家の令嬢ではございません」

「いいや、君はファーレスト公爵家の令嬢だよ」

「違います」

「違わない。ファーレスト公爵が、君を探している」

「…………、私は、お父様に申し上げました。家を出ていくと」
 

 あの日、私は出ていくと言った。
 もともと、お父様だって、私を追い出すつもりだったのだから、何も問題はない。

 頑として引かないと、その気持ちを込めてクリード王子の瞳を見つめる。

 クリード王子も何かを感じたのか、ふぅーと細く長い息を吐き出した。

 
「君を探していた」

「……申し訳ございません。意味が理解できません。罪人として処刑する、という意味でしょうか」
 

 クリード王子はとんでもないとばかりに首を振る。

 
「君は罪人じゃないよ」

「……アレだけのことを書かれて、何を今さらっ」
 

 あんな、デタラメな記事。
 国民全てに私が悪いと、公爵家は貴族の恥だと、そう書いておいてっ。何を今さらっ……。

 
「兄上は、継承権を剥奪された」
 

 ヒュッと、息を飲んだ。

 目を見開いたまま、同じ色のブルーの瞳を見る。
 濁りのないその瞳は、嘘をついていないと、そう訴えていた。

 継承権を、剥奪?

 あのバカ王子が?
 

 婚約が決まった日、バカ王子は、下手くそな花で作られたブカブカな指輪を持って私に言った。

 
『婚約が決まったようだな!』

『そうですね』

『アメリア! 嬉しいかっ? 嬉しいだろう? 私は嬉しいぞ!』

『ゼルベルグ様が喜んでいるのであれば、私も同じ気持ちです』

『馬鹿者! もっと喜ばんか!』

 
 すぐ癇癪を起こすめんどくさいバカ王子だった。

 
『私の妃の印だ』

『これは……?』

『む、少し大きすぎたようだ。まあ、大きくなればピッタリだ! 問題ない!』

『大きくなる頃には枯れていますよ』

『おまえは、本当に夢がないな』

『あなたは……ほんとうに、バカですね』

 バカだから、すぐ人に騙される。

 
 だから、今だってこうやって――
 
 
 
「今の王位第一継承者は、僕だ」
 

 
 ああ、もう。

 本当に、バカ。
 

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