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40 長い長い物語の終わりの始まり

 アルジュとあの魔人が、兄弟。
 ということは、あの魔人もその調香持ちに会っている。
 あまり似てない、というのは、私とその当時の調香持ちが、ということ?

 あの魔人はアルジュのことを恨んでいたみたいだし、これはもしかして、三角関係が拗れた末の結果!?

 うわぁ、なんてはた迷惑な。これは確かに迷惑すぎる残酷な神々ね。間違いない。

「アルジュについて知っているのはそのくらいだ。アルジュの想い人については、私も詳しくは知らぬ」

「そ、そう。そうなのね」

 
 あれ、私、どうしてアルジュの想い人が調香持ちだって知っているんだっけ……。アルジュから聞いてたのかな。

 
「アメリア?」

「あ、ううん、なんでもないの」

 
 首を振るとエルクが嫌そうに鼻の頭にシワを寄せた。

 
「エルク、そんな顔しないの。美少年なのに」

「主が隠し事をするからだ」

「してないよ、してない。気のせい」

「私は嘘はわかると言ったはずだ」

 
 げげ、まさかスキル使われた!?
 この戦闘じゃないとスキル発動したのかわからないの、不便すぎる。

 
「じゃあ隠し事したけど、言わない」

 
 私は開き直った。エルクは今度は目を眇める。
 あの純真で無垢な子犬みたいだったエルクはどこへ行ってしまったのか。

 
「エルク様ーーー!」

 
 突然、けたたましく扉がノックされる。声でわかる、マルクだ。
 相変わらず騒々しい。エルクが入れと促した。一応私の部屋だけどね? まあ、エルクの家だからいいけどね?

 
「エルク様! 直感の者から行く場所を授かってきました!」

「おお、来たか!」

 
 エルクが立ち上がる。
 そう、直感のスキルとはかなり優秀なようで、常に人が待っているのだそうだ。そのため、私たちも順番待ちをしなくてはならず、こうして数日間も足止めをくらっていた。

 
「えーと、場所は、マリアデーベルの近くの森ですね!」

「ねぇねぇ、マリアデーベルってどこ? この国以外にも国あるの?」

「お嬢、アルジュと旅をしてきたのでは?」

 
 マルクが不思議そうに首を傾げた。

 
「え、いや、アルジュスパルタだったから、突然草原に連れていかれたの。だから街とかは全然」

 
 嘘は言っていない。嘘は。
 そもそも、旅と言っても半日くらいだけれども。街から街へ行けるはずが……あ、アルジュなら行けるのね。移動が一瞬って、やっぱりずるいスキルだ。

 
「マリアデーベルは、薬の街ですね」

「へぇ」

「魔物の嫌う薬を使って、国を守っています」

「そんなのあるのね」

 
 死の大地なんて呼ばれていたけれど、もしかして結構人がいるのでは? 海があったから交流がなかっただけで、結構な数の国があるのかもしれない。そして、その全てが私のいた大地とは全く異なった文化を創っている。

 なんだか、楽しそう。

 
「おっ、お嬢、乗り気ですね?」

「知らないことを知るのは、結構好きなの」

「アルジュの問題が片付いたら、すぐに戻る」

「ええ、エルクケチね」

「ケチではない」

 
 ふーん? とエルクを舐めるように見つめて、そうだ、とマルクに視線を移す。

 
「ねぇマルク」

「なんですか、お嬢」

「私、剣を習いたいの。旅をしながらでいいから、教えてくれる?」

 
 マルクは、チラリとエルクを見た。
 エルクは、黙って首を横に振る。
 マルクは、申し訳なさそうにできないと口にした。

 この、エルク信者め!!!

 私はエルクを流し目で見る。エルクは素知らぬフリをしているけれど、今の一連の流れ、バレバレよ!

 
「エルク?」

「うむ」

「剣を扱えたほうが、身の危険が減ると思わない?」

 
 エルクはグッと押し黙った。眉間にシワが寄る。考えているらしい。

 
「スキルを使い果たして、でもあと何かあれば勝てる、という時に、もしも私が剣を使えたら、生き残れるかもしれない」

「……」

「でも、もしも、私が剣も何も使えなかったら……私はきっと、死んじゃうのね」

「……わかった。認めよう」

 
 ふ、エルクも、案外ちょろいモノね。
 心の中でガッツポーズをして、マルクに向き直る。

 
「私たぶん、結構頑丈になったみたいなのよね。レベルアップしたからかしら?」

「おそらく、その効果かと。身体能力も上昇する傾向にありますね」

「なるほどね。マルクの腰の剣、握らせて?」

 
 ジロリ、とエルクが見てきた。剣を持つもの不満だと言いたいの? 無視してマルクの腰の剣に手をかける。

 
「やっぱり何かあったら怖いから、マルク抜いて」

 
 マルクが豪快に笑いながら腰の剣を抜き、危なくないよう刃先を下に向けて手渡してくる。

 
「重いですぞ」

「わ、わかった」

 
 両手で握る。マルクが手を離した。ズシッとくるけど、持てないことはない。ゆっくりと持ち上げてみる。
 おお、意外といけそうね。

 
「その剣は結構重い物なので、もう少し軽めのであればお嬢でも振り回せそうですね」

「ほんと? なら剣を見繕って!」

「おやすい御用です、お嬢」

 
 これで私も剣を扱える。
 剣が扱えれば、私はきっと、とんでもなく強くなれるっ!

 待ってなさい、アルジュ。
 百年続いた三角関係に、決着を付けてあげるわ!

 そして、私の不幸のアメリア人生も、これでたたっ切る!

 ゲームの結末通りになんてさせない。

 私の人生は、私が切り開くの!

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