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46 おいでませ!地獄へ

 ニュルリと、何かが一斉に地面を這った。

 それを感知した瞬間。
 ゾワっとした嫌悪感が体を包み込む。

 まさか。まさか。今のって……っ。

 そっと、地面を見た。

 
「いやぁぁあああああああ!!!!」
 

 私の悲鳴が木霊した。

 アルジュがレベルを上げてくれと、そう言って、私たちを連れて移動のスキルを使った。

 てっきり、てっきり、この間と同じ場所だと思っていた。

 そう、私は油断をしていた。

 スルスルと足に巻きついてきて、動けなくなる。

 
「アメリア!?」

「エルク、えるくっ、とって、取って!」
 

 半泣きになりながら訴える。
 エルクはその目に動揺を走らせて、私の足に手を伸ばした。太ももに巻きついていた感触がなくなって、そのまま腰が抜けて座り込もうとして、地面に蔓延る『ソレ』を見て、エルクの背中にしがみついた。
 そのままよじ登って、足を地面から離す。

 
「あ、アメリアっ」

「動かないでっ、動かないでっ! もうやだ、帰る。エルク倒して、はやく倒してっ!」
 

 エルクの首筋に顔を埋めて視界を塞ぐ。

 
「あんた、芋虫は平気なのに、蛇はダメなんだ?」

 
 ひぃぃぃぃぃ! 口にするのもおぞましい名を声にするとは、アルジュ、恐ろしい。

 
「それより、王子がいろいろやばそうだけど」
 

 そう言われてしぶしぶ顔を上げる。
 エルクが顔を真っ赤にして固まっていた。

 
「……、早く倒して」

 
 ガブッと肩に噛み付いた。
 ビクリと体を震わせたエルクが、私を支えるように左手を後ろに回す。

 
「アメリアっ」

「エルク様ーーー! ほら見てください、こいつら手に絡みついてきて可愛いですよ」

 
 ずいっと、マルクが世にも恐ろしいものを腕に巻きつけて帰ってきた。

 
「いやぁぁぁあああああああああ!!!」

「……っ、アメリアっ、大丈夫だから落ち着けっ」
 

 大丈夫!? この状況で!?
 地面には世にも恐ろしいアレがこんなにいるというのに!?

 
「帰る、帰る! アルジュ、私を帰して!」

「んー? 面白いからヤダ」

 
 この男、この地獄から生きて帰ったら絶対泣かす!!!

 半泣きになりながらアルジュを睨んだ。

 
「それよりほら、さっさと倒しなよ。レベル上げてもらわなきゃ困るんだけど?」

「別のとこにして」

「無理」
 

 不満を乗せてガブガブとエルクの肩を噛んだ。

 エルクが私を背中におぶったまま右手で剣を抜く。
 そして、地面にいる奴らをザクッと切り裂いた。

 謎の青い液体が、地面に飛び散った。

 
 もうだめ……死にたい。

 
 そうか。
 きっと、ゲームのアメリアはこうして死んだのね。

 今ならその気持ちわかるわ。

 ああ、世にもおぞましい。
 こんなことが起きるなんて。

 私はもう、死ぬのね……。

 
「お嬢? エルク様! お嬢が口から泡吹いてますっ!」

「アメリアっ!?」

「……っ、面白すぎでしょ。いいこと知ったなぁ」

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